第94回懇話会のお知らせ(終了しました)

2019年1月27日(日)茅ヶ崎市勤労市民会館 14:00~18:00
生物分類学から超生物学へ ―「いせのうみ」に見る生物分類学の新展開―
講師:渡部 元さん(生物学基礎論・生物分類学、三重外湾漁業協同組合 アクアショップ 夢市場…ドルフィン:新規事業調査員)

講演概要

 生物分類学は現在、国際的な視座に立つ場合に、研究者人口の急減、社会の注目を得づらくなっているなどの逆風にさらされている。とりわけ、日本の場合には、計算機科学よりのタクソノミーと、自然史よりの形態分類学のはざまで思想的な混乱が継続しており、正しく国際動物命名規約を履行する前者の立場が少数派になっている。特に、分子生物学との連絡の中で、分子系統解析の出現によりこの傾向は強化されており、既成事実として形態分類学/進化生物学のトレンドを固定しようとする動きが目立つ。本講演では、地域振興を引き合いにして、少数派としての「タクソノミーよりの生物分類学」の理論と実際を紹介し、水族館へ海のいきものをお届けするアクアショップの通常業務を具体例とし、漁業や医療との比較検討から、意外な新展開が見込めることを紹介したい。

 特筆すべき内容として、生物分類学を命名規約の法令構成を踏まえながら、生物学の形式的体系を用意した上で、数学と同様にこの形式的体系をメタ視点から俯瞰する「超生物学(生物学基礎論)」を提案するところに最大の特徴がある。そこで、認知に関する神経生理学から出発したオートポイエーシス理論を運用し、これを数理論理学、計算機科学に連絡可能な形式的体系に変換し、生物分類学を基礎とした生物学の体系的整備を主眼にしている点も大きな特徴である。これらと、三重県の大きな特徴でもある、「いせのうみ」をめぐる伊勢神宮の思想的特性、歴史的経緯をなぞらえ、人間や人間社会に応用できる「生物学のプログラム」を志向する点にも類例のないユニークさを認めることができる。

講師プロフィール

渡部 元(わたべ はじめ)
1971(昭和46)年1月東京生まれ。専攻は超生物学(生物学基礎論)・生物分類学。博士(理学)東京大学。科学技術特別研究員(旧海洋科学技術センターおよび海洋研究開発機構)、東京大学海洋研究所 海洋科学特定協同研究員、理化学研究所 生命情報基盤研究部門勤務等を経て、現在は、三重外湾漁業協同組合 アクアショップ 夢市場…ドルフィン(新規事業調査員)。幼少期より両親や漁業関係者の後押しを受け、昭和天皇の蟹類分類学ご相談役であった酒井 恒博士の指導を受けて海洋生物学、特に深海性甲殻類の分類生態研究を進め、2000(平成12)年1月、東京大学大学院にて博士(理学)を取得。その後、三度の有人深海潜水調査船による海底作業、世界初のインド洋熱水噴出域の発見、我が国の海洋基本法制定、ナショナルバイオサイエンスデータベース事業への参加を経て、生物分類学から出発した新しい生物学を基礎づける超生物学(生物学基礎論)の基盤構築を目指し、地域振興に資する医療情報への応用を念頭に、インターネットを利用した水族館へ海のいきものをお届けするアクアショップにて活動している。

日時/会場

日時:2019年1月27日(日)14:00~18:00
会場茅ヶ崎市勤労市民会館(253-0044 茅ヶ崎市新栄町13-32)電話:0467-88-1331
参加費:1,000円
連絡先:猪野修治(湘南科学史懇話会代表)
〒242-0023 大和市渋谷3-4-1 TEL/FAX: 046-269-8210 email: shujiino@js6.so-net.ne.jp
湘南科学史懇話会 http://shonan-kk.net/

資料

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