第99回懇話会のお知らせ(終了しました)

2020年1月26日(日)Fプレイス(藤沢労働会館)14:00~18:00
『和のものづくりの源流』-第1講 日本民族の由来 & 第2講 卓越した日本の石器時代-
講師:坂本 治久さん(機械工学、工作機械エンジニア、元上智大学教授)

講演概要

 グローバル化した世界で力を発揮して貢献するために、日本人は、日本の文化とその由来に対する正しい認識を共有し、それを堂々と主張できる国際人としての基盤を確立する必要がある。私は、日本の文化の由来と特質を"和のものづくり"の観点から考える「和のものづくりの源流」という一連の講義を構築しつつあり、本講演では、その端緒となる日本民族の由来と石器時代の日本のものづくりについて紹介させていただきたい。

 分子人類学の進歩は、アフリカを起源とするホモ・サピエンスの足取りをはっきりとさせ、ネアンデルタール人との混血などの多様な物証を次々に生み出している。このような自然科学的アプローチは、日本民族が列島に到達した多様な遺伝的系統を平和的に融合して誕生したことや、朝鮮半島、中国、マレー半島に現存する民族と沖縄やアイヌを含む日本民族との遺伝的系統が完全に別系統であることなどを明らかにしている。

 また、日本人が生み出したものづくりの技術は、旧石器時代から世界的にユニークでオリジナリティの高いものであったことがわかっている。例えば、日本人は、3万5千年以上前に打製石斧の刃の部分だけを局部的に研磨仕上げした"局部磨製石斧"を発明しており、しかもその技術を列島の隅々に"伝承"している。この時期は世界的に旧石器時代であり、"欧米の常識"では「磨製技術はまだ普及していない」とされていた。このように日本のものづくりの技術水準が"欧米の常識"よりも先行している事例は、時代を下っても綿々と存在しており、"和のものづくり"は、欧米や中国などより進んだ技術として生み出されてきたのである。

 日本の新石器時代は、"縄文時代"と呼ばれる。1万6千年以上前に既に土器が使用され、果実や種実(栗や胡桃など)の樹木を栽培し、下草に野菜や山菜を植えた"雑木林"を作りだし、稲も既に約6000年前に栽培されていた。ユーラシア大陸の他の民族は、小麦や稲に一本化した"穀物農耕"にすぐに移行したが、日本列島では、環境変動にロバストな多様な植生を活かした"独自の栽培文明"を1万3千年以上継続して"穀物農耕"への移行を拒んだ。日本人は約7000年前から朝鮮半島に居住域を広げて大陸文化と交流して情報収集していたが、大陸の新しい文化様式に迎合せずに独自の文化を維持したのである。

 今日につながる日本人の社会やものづくりの文化は、欧米が規定する枠組みに収まらない独自の発展を遂げ、数万年の長期に渡って平和的に続いてきた。本講義では、このような日本民族とそのものづくりの源流について、物証を明確にしながらできるだけ具体的に紹介していきたい。

講師プロフィール

坂本 治久(さかもと はるひさ)
 1964年生まれ。1990年 千葉大学大学院工学研究科(修士課程)修了。1995年まで日立製作所にてレーザ微細加工の研究開発に従事。1995年から上智大学理工学部に助手として着任し、以来、工作機械や精密加工に関わる"精密工学"を専門とする。2003年、上智大学より博士(工学)の学位を取得して専任講師に昇格し、2007年から准教授、2012年から教授として教職に従事。2018年より中国大連の工作機械メーカにて研究開発を指導。専門は精密工学であるが、上智大学にて全学共通科目「ものづくり原論」を新たに開講した経緯を経て当該分野の調査研究を並行して行っている。

日時/会場

日時:2020年1月26日(日)14:00~18:00
会場Fプレイス(藤沢労働会館)(藤沢市本町1丁目12番17号、JR/小田急江の線「藤沢駅」徒歩15分、小田急江の島線「藤沢本町駅」徒歩7分。電話0466-26-7811)
参加費:1,000円
連絡先:猪野修治(湘南科学史懇話会代表)
〒242-0023 大和市渋谷3-4-1 TEL/FAX: 046-269-8210 email: shujiino@js6.so-net.ne.jp
湘南科学史懇話会 http://shonan-kk.net/

資料

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